井上ひさしは社会に対して積極的に行動し、発言しました。コラムやエッセイに書き、インタビューや講演で語ったことばの中から<今を考えるヒント>をご紹介します。

  1999年執筆

「ウソのおきて」 より抜粋

  ところで、ウソについて、わたしたちはとても寛容です。その証拠に、わたしたちはウソを評価する諺<ことわざ>をたくさんもっています。ウソも方便、ウソをつかねば仏になれぬ、ウソも追従<ついしょう>も世渡り、ウソはつき次第、ウソは日本の宝など、数えあげればきりがない。諺だからといって軽んじてはいけないので、折口信夫<おりぐちしのぶ>にならって云うなら、諺とは人間の口を通して告げられた神の声なのです(もちろん、ウソは泥棒のはじまり、ウソは後からはげる、ウソを云えば閻魔<えんま>さまに舌を抜かれる、といったウソをいましめる諺もありますけれど)。
  芸術などは、もうウソの温床、中でも文学はウソのかたまりのようなもので、たとえば、婉曲<えんきょく>にいう、強調し誇張する、反語<アイロニー>を使う、擬人法にする、敬語で必要以上に相手をたてまつるなど、すべてがウソを志向する修辞法です。
  けれども、ウソについてたった一つ、鉄則があって、それは他人さまからお金をいただいて、それで生計を立てている人聞は、その他人さまに対してどんなことがあってもウソを云ってはいけないということ。
  したがって、税金から給料を貰っている人たち、つまり公務員のみなさんは、納税者にだけはウソをついてはならない。神奈川県警のウソ答弁にみんなが腹を立てているのは、ほかでもない、彼らが公僕だからです。わたしたちの税金で暮らしを立てて、その代わり、わたしたちのために計らうことが本務なのに、ウソの煙幕をはって納税者をたぶらかそうとする。だからみんなが怒っているのです。

『にほん語観察ノート』(中公文庫)に収録

    

Lists

 NEW!
 戯曲雑誌「せりふの時代」2000年春号掲載
日本語は「文化」か、「実用」か?
『話し言葉の日本語』(新潮文庫)より抜粋


 1991年11月「中央公論」掲載
魯迅の講義ノート
『シャンハイムーン』谷崎賞受賞のことばより抜粋


 2001年8月9日 朝日新聞掲載
首相の靖国参拝問題
『井上ひさしコレクション』日本の巻(岩波書店)に収録


 1975年4月執筆
悪態技術
『井上ひさしベスト・エッセイ」(ちくま文庫)に収録


 講演 2003年5月24日「吉野作造を読み返す」より
憲法は「押しつけ」でない
『この人から受け継ぐもの』(岩波現代文庫)に収録


 2003年談話
政治に関心をもつこと
『井上ひさしと考える日本の農業』山下惣一編(家の光協会)
「フツーの人たちが問題意識をもたないと、行政も政治家も動かない」より抜粋


 2003年執筆
怯える前に相手を知ろう
『井上ひさしの読書眼鏡』(中公文庫)に収録


 1974年執筆
謹賀新年
『巷談辞典』(河出文庫)に収録


 2008年
あっという間の出来事
『ふふふふ』(講談社文庫)に収録


 2008年
わたしの読書生活
『ふふふふ』(講談社文庫)に収録


 2001年
生きる希望が「なにを書くか」の原点
対談集「話し言葉の日本語」より


 2006年10月12日
日中文学交流公開シンポジウム「文学と映画」より
創作の秘儀―見えないものを見る


 「鬼と仏」2002年執筆
講談社文庫『ふふふ』に収録


 2006年5月3日 <憲法制定60年>
「この日、集合」(紀伊國屋ホール)
“東京裁判と日本人の戦争責任”について(1)~(5)


 「核武装の主張」1999年執筆
中公文庫『にほん語観察ノート』に収録


 「ウソのおきて」1999年執筆
中公文庫『にほん語観察ノート』に収録


  2007年11月22日
社団法人自由人権協会(JCLU)創立60周年記念トークショー
「憲法」を熱く語ろう(1)~(2)


 「四月馬鹿」2002年執筆
講談社文庫『ふふふ』に収録


 「かならず失敗する秘訣六カ条」2005年執筆
文藝春秋『「井上ひさしから、娘へ」57通の往復書簡』
(共著:井上綾)に収録


 「情報隠し」2006年執筆
講談社文庫『ふふふふ』に収録


 2008年3月30日 朝日新聞掲載
新聞と戦争 ―― メディアの果たす役割は
深みのある歴史分析こそ


 2007年5月5日 山形新聞掲載
憲法60年に思う 自信持ち世界へ発信