2004年6月
「記憶せよ、抗議せよ、そして生き延びよ」
井上 ――国際連合が二〇世紀の戦争による死者の数をまとめているのですが、それによると「二〇世紀の戦争を通して、国家が殺した外国人は六八〇〇万人。これに対して、国家が殺した自国民はその二倍の一億三四〇〇万人」だそうです。戦争をすると、平均的に見て、自国民のほうが たくさん死ぬのです。ヒロシマ、ナガサキの死者にしてもアメリカに殺されたと同時にじつは 日本人に殺されたといってよいと思います。じつは自国の指導者に殺されたかもしれない。――
井上 ――イギリスの反核運動のリーダーで歴史学者のエドワード・トムソンの、「抗議せよ、そして、生き延びよ」というスローガンが、ぼくのなかにもありました。抗議しないと駄目だ。でも何によって抗議するかというと、それは記憶じゃないかと思った。だからぼくは、「記憶せよ、抗議せよ、そして、生き延びよ」と、ひとつ足したんです。――
「記憶せよ、抗議せよ、そして生き延びよ」小森陽一対談集
(シネ・フロント社)より抜粋
Tweet